透明化技術

通常紙にはパルプ繊維間に空隙があり、光が乱反射するため紙は白く不透明になります。紙を透明にするためには、紙層中の空隙をできるだけ少なくする必要があります。紙の製造には、「叩解」（こうかい）と呼ばれる工程がありますが、ここではパルプ繊維をすりつぶしたりカットする処理を行っています。紙の透明性を高めるためにはパルプ繊維を柔軟にする必要があることから、通常の紙よりもずっと高度な「叩解」作業を行います。

なお「叩解」を進めるとパルプ繊維からの濾水性が悪くなるため、抄紙工程での工夫も必要となります。抄紙した紙は、その後スーパーキャレンダーと呼ばれる設備で圧力をかけ、空隙の少ない緻密な紙とすることで、高い透明性を得ることができます。このような高密度で透明性の高い紙は、グラシン紙と呼ばれています。

当社で生産しているグラシン紙はその高い透明性を生かして薬品包装用などにも使われていますが、この他に高密度であるため表面から薬品が浸透しづらい特長を有しています。たとえば剥離紙は紙表面にシリコーン層を付与して作られていますが、グラシン紙の場合シリコーンを浸透させないような処理を行わずに、直接シリコーンを塗ることができるので、剥離紙の基紙としても利用されています。このことから肉まんやあんまん用の剥離紙にも、グラシン紙が利用されています。ロゴやマークなどを印刷して意匠性を高めたり、塗工するシリコーンを工夫して剥離性に変化を持たせております。
なおグラシン紙よりも比較的透明度の低いタイプの紙もあり（セミグラシンと呼んだりしています）、粘着紙の剥離紙用に使用されていますが、この紙の場合はシリコーンの浸透をできるだけ少なくするために、紙の表面に目止め剤とよばれる薬品を塗工する工夫を行っています。

紙はセルロース繊維が複雑に絡み合い、微細な隙間には空気を含んでいます。この空気とセルロースの屈折率の違いから光は複雑に屈折するため、紙は白く見えます。当社ではパーチメント紙という半透明な紙を生産しておりますが、これは紙を硫酸処理によって透明性を高めた製品であり、「硫酸紙」とも呼ばれています。（中世では子牛や子羊の皮から作られる紙を「パーチメント紙」と呼んでいました。）

硫酸によって紙のセルロース繊維が変性し、粘調な半透明のゼラチン状物質であるアミロイドが、紙の繊維表面を覆い、繊維間を結合して紙の細孔を埋め半透明にしています。硫酸が含浸しやすい品質の原紙を用い、硫酸含浸後はアルカリ性の苛性ソーダによる中和と水洗いを行って、製品となります。

パーチメント紙はセルロース繊維の隙間をアミロイドで埋めているため、耐水性・耐油性が高く、その特長を生かして食品の分野で幅広く活用されています。またパーチメント紙の大きな特長のひとつに模様をつけられることがあります。原紙は硫酸処理することで密度が高くなり、厚さは薄くなります。この硫酸加工の際にあらかじめ硫酸の含浸を阻害する物質を絵柄に合わせて原紙に塗布しておくと、その絵柄の部分だけが半透明にならずに白いまま残ります。印刷とは違い、盛り上がったように風合いのある模様が現れますので、高級感がありその意匠性からファンシーペーパーとしても利用されています。その優れた意匠性を生かし、高級感を大切にするお菓子の包装や、ロゴマークの表示にも用いられています。
紙の表面の繊維が被覆されているため毛羽立ちがないパーチメント紙は、弱剥離性があるとともに表面強度も高いため、剥離紙としても利用されています。紙そのものの剥離性を利用するため、シリコーンを塗工するなどの処理をしなくてもそのまま剥離紙とすることができます。