パルプの自製化/
原料・調成技術
パルプをもとから自製しています。
パルプ化から抄紙までの一貫体制でお客様のニーズに対応。
紙を造る、というと抄紙の工程を思い浮かべますが、江別工場では紙の原料となるパルプの製造から一貫して行っています。 また自分たちでパルプ化していますので異物の混入を少なくでき、その分高品質の製品を少ない工程で製造することができるというメリットもあります。 |
では、パルプ工程ではどのようなことが行われているのかをご紹介しましょう。パルプ化は、木材チップを蒸解釜で煮ることから始まります。薬品を加えて煮込むことで木材チップのリグニンが溶け、繊維がばらばらになります。
木材チップはいつも同じものとは限らず、世界各地から運ばれてきます。寒い所で育った木と温かい所で育った木では同じ品種でも性質は違います。そのため木材チップに合わせて蒸解の時間や温度を調整します。
温度が高すぎるとお粥のようになってしまいますし、同じ温度でも時間が短すぎると固くなってしまいます。 その後洗浄、精選、酸素脱リグニン、漂白、もう一度除塵へと進みます。金属異物は、ヤードからの払出工程、釜詰込工程で磁選機という磁石を使用してチップを処理し、除去しています。チップから持ち込まれる砂粒などの重量異物は、遠心分離で取り除きます。 それ以外でも、パルプ化の段階でシビアに除塵する必要のあるものは遠心分離の回数を増やしてハイグレードなパルプを製造します。 電子基板になる原紙では電解質のものがあると使用できないものもあるため、パルプ化の段階でイオンのコントロールなども行います。 |
非木材のパルプ化にも対応
江別工場には通常のパルプ製造のための連続式蒸解釜のほかに、地球釜と呼ばれる蒸解釜もあります。 これは正式名称を『地球型蒸煮缶』といい、非木材繊維である麻などをパルプ化します。 原料と水と薬品を入れ、数時間かけて回転させながら高温で蒸しあげ、1基の地球釜で非木材パルプを生産することができます。 麻からは、通気性がよく、しなやかで強度に優れた紙を造ることができます。 麻は木材とはリグニン成分やセルロース成分などの化学成分の組成が異なるため、蒸解薬品や漂白薬品は木材と異なるものを使用します。 |
原料・調成は新たな製品のキー!
パルプ化と抄紙の間で、パルプに機能を加える。
紙が完成するまで、パルプ工程と抄紙工程の間に調成工程があります。 叩解はパルプをもみほぐすような工程で、叩解を進めると引張強度は強くなりますが、やりすぎると引裂強度が弱くなります。 そのため必要な特性を踏まえ、ちょうどいい領域を選択します。 広葉樹、針葉樹のパルプの配合バランスは、印刷適性や強度など品質設計によって決定することになります。広葉樹のパルプは繊維が短いのでシートにすると均一になり地合いがよく、印刷特性に優れています。このパルプにもう少し強度が欲しいというときは繊維が長く強度のある針葉樹のパルプを配合するわけです。 |
薬品は紙に特殊な機能を付与するためのもので、たとえば水が浸みこまない紙が欲しいといった場合は水の浸透を抑えるサイズ剤を加えます。
水は浸透しても良いが耐水性が欲しいといった場合はそれに応じた薬品を加えます。薬品添加率が高く、各薬品添加率のバランスが悪いと、製品への薬品定着率が劣り、結果、余剰薬品による凝集物(異物)が発生しやすくなりますので、工場内に常駐する研究所では事前のラボテストにて各薬品の添加バランスを確認し、さらに、実機テストにて系内薬品バランスを調整し、ユーザーの要求特性を満足する紙を開発しています。ユーザーの要求特性が高い場合、実機で何度も繰返しテストを行ったり、従来の調整範囲を超過した抄紙条件でのテストが必要になることもあります。
パルプ化、調成、抄紙の工程が連携し生み出される多彩な製品。
前述しましたように、調成によってさまざまな紙を造り出すことができます。厚みのある嵩高な紙を造るときは嵩高剤を調成の段階で加えます。通常紙は繊維と繊維を接着させ強度を保ちますが、嵩高剤は逆に繊維と繊維があまりくっつかないようにする薬品です。
電子基板に使用される原紙はフェノール樹脂を含浸しやすくするために、調成の工程で工夫が施されています。
“スノークリスタル”という国内でもっとも白色度が高い印刷用紙の生産も行っています。 パルプ化の工程で、通常よりも漂白の度合いを高め、さらに調成~抄紙工程でも薬品を加えて白色度をいっそう高めています。 使用する繊維の太さや長さ、バランスなどが重要になる製品です。 |