ハイグレードOPPフィルム(HGPP)
滋賀工場イズムの継承
片面に凹凸がある、マット仕上げのコンデンサーフィルム、誕生。
琵琶湖の南東部、滋賀県湖南市に、王子エフテックスの滋賀工場はあります。王子グループの大部分の工場は紙製品の生産を中心に行っているのに対し、ここはプラスチックフィルム製品の開発と製造を専門的に行っているグループの中でも特異な存在です。
『滋賀工場でしかできないもの』を求めて・・・
当社は、『滋賀工場でしかできないもの』を求めて、新しいフィルムの開発に意欲的に取り組んでおります。その一つに片面マット調のコンデンサーフィルムが挙げられます。 製品を巻き取る際に、表面に凹凸がまったくない平滑なものは、フィルム同士がくっついてしまって、剥がすことができません。凹凸のあるマット調になっていると、フィルムがロールを通るときに間を空気が抜け、巻き取ることが容易にできることから、片面フラット仕上げ、片面マット調のフィルムの開発に着手しました。凹凸を作るために添加物を入れると絶縁性能を阻害してしまうことから、まずは材料の設計から始めました。具体的には、ポリプロピレンの分子量と立体規則性の検討です。 |
分子量とは分子の鎖の長さのことで、その分布が広いほど薄く延ばしやすく、狭いほど耐電圧性が高くなります。 また、立体規則性とは分子の並び方で、きれいに並んで結晶性が高いと耐電圧性が高くなります。 |
当時、滋賀工場では量産機が1ラインだったため、試作はいつも夜通しの作業となりましたが、『滋賀工場にしかできないもの』の精神から何度となく試作を繰り返して、片面マット仕上げのコンデンサーフィルムは完成しました。 このフィルムの開発に携わり、現在は営業副本部長の大塚は語ります。 |
お客様と二人三脚
除塵という課題をクリアして、プロテクトフィルムへ転用。
片面マット調のコンデンサーフィルムとして開発したフィルムを、プロテクトフィルムとして用途展開したのはそれから数年後のことでした。 コンピューターのパーツで小さな基盤を幾層にも積み重ねているものがあります。それを絶縁するための樹脂として利用できないかということをお客様に話を持ち掛けたことから始まりました。 片面マット仕上げのフィルムは加工がしやすいことと、貼り付けたときの食いつきの良さなどが評価され、王子エフテックスが開発したポリプロピレンのフィルムは、いよいよコンピューター業界での利用へ大きく一歩を踏み出しました。 |
ただし、実際のビジネスとして動き出すまでには、そこから苦労することになります。 プロテクトフィルムとして利用するためにはフィルムを徹底的に除塵する必要があり、ここでも『滋賀工場にしかできないもの』の精神から即時対応、しかし、お客様との取引が始まるまでには約1年もかかりました。 そうしてやっと始まった取引は20年以上続き、そのお客様とは厚い信頼関係で結ばれています。 |
光学分野への参入
培ってきた技術をベースに、さらに高性能なフィルムの開発へ。
液晶画面のカバーフィルムでは、フィルム製膜時に発生する数μm単位の大きさの異物(フィッシュアイ)やキズがNGとなります。フィッシュアイとは、異物が核となりその周りに隙間が出来きて、「魚の目」のように見えることが由来です。
製造設備を徹底的にチェックして、特に異物が発生し易い箇所を見つけ出し、改造並びに効果的な清掃を実施しました。
そのようにして作られたフィルムは、液晶画面のカバーフィルムを要求通りの品質に仕上げるために、機器による検査と併せて、専門検査員による品質検査を行い、キズやフィッシュアイを極限まで除去しています。
こうして厳しい合格基準をクリアした、OPPの中ではフィッシュアイが極めて少ない平滑タイプは、多くの実績を挙げています。
王子エフテックスのもっとも進化した特殊工業用OPPフィルムは、これまで培ってきた技術をベースに性能を大きく向上し、フィッシュアイが少ないタイプだけでなく、数μmの極薄タイプなど、さまざまな製品が用意されています。
もちろん原料自体も純度の高いポリプロピレンで、製造工程でも添加剤などが入らないピュアなフィルムのため、電子・電気部材用の離型用フィルムや、光学分野での製造工程用カバーフィルムといった特殊工業用として広範に利用されています。産業技術の進展とともに、OPPフィルムにもさらに高度な性能が求められることから、王子エフテックスは電子・電気工学や光学分野の発展と歩調を合わせ、今日も高性能なフィルムの研究開発に取り組んでいます。